【レース本番編】



レース当日は秋の始まりを感じさせる少し肌寒い曇り空、湿った空気が山を覆う。
男と男の真剣勝負に持って来いといった血生臭い空気だ。
来るまでの道中もイルチャンティーの間には緊迫した空気が流れていて、全く会話がない。
俺が寝ていたのも関係しているかもしれない。

現場に着いて俺を起こしたピンク太郎がこう言った。

「ごめん、間違えて3時間耐久レースにエントリーしちゃった。しかも同じチームね!」

おい! この野郎!
俺がお前に圧勝してモテるという夢(ドリーム)はどうしてくれんだよ!
俺の計画(プラン)が台無しだ!



しかしこれ以上クソバカ太郎を責めても仕方ない。
ってことで今回はイルチャンティー間での勝負はナシ!
これで良かったのかもしれない!

木村先生ありがとう!

サーキット場に来たおかげで、
僕たち仲良くやっていけそうです。





アイルトン・モテとミハエル・モテマッハが手を組んだら敵ナシ!
2人で力を合わせて、この場にいる全てのレーサーに圧勝しようじゃないか。

よし、さっさとモテようぜ!



レンタルヘルメットを頭皮や顔面の汚れから守るマスクを会場にいた誰よりも早く着用。
モテる男は準備が早い!



準備がプロよりも早かった俺達は、インストラクターによるカートの説明をプロよりも聞く。
この時点で2回もプロに勝っている! 

今のところ総合ナンバー1は俺たちに違いない!

それにしてもカートはいろんなルールがてんこ盛り。
全部覚えるのなんて至難の技だ。
プロは頭良すぎ。



なんとか理解したのでテスト走行に挑戦。
イルチャンティーの吸収の良さはまるで多い日でも安心なアレだぜ!
まずは僕、チェック中村。
早速カートに乗り込むとライドオン!




順調なすべり出し。
あと何週練習していいのだろうか?
チームからの指示が出されるホワイトボードに目をやった…。



他のチームは真剣そのものなのに、この期に及んでまだふざけまくりやがって!
俺はいいけど真剣にやってる人たちに失礼だろうが!
もう我慢できねえ! 降りたらギッタギタに…




でもニッコリニッコリ西ニッコリ!! (西日暮里)
そしてピース!! 
愛嬌たっぷりの僕らを怒る人たちなんていなかったよ!

そろそろピンク太郎に交代。
それにしても車体が小さいし車高も低いから体感速度がとんでもなくておっかねえ!
ハンドルも重たいし…。
でもまあ、アドバイスとはかしないよ。

ピンク頑張れ! そんだけ!







さすが運転大好きピンク太郎。
ピットに腕立てを持ち込むレーサーは世界広しと言えどもお前ぐらいに違いない。
なかなかいい腕の上がりを見せている。



午前の練習走行を終え、
午後の本番までの間僕らは昼食をとったり、作戦を練ったり、
ブラブラ遊んだりして過ごすことにした。



ピンク太郎のやる気が爆発!

そして午後になり、いよいよ3時間耐久レース本番。



俺らは「第一回おモテ参道」振りとなる、あの勝負ウエアに着替えた。
ギラギラしていたあの頃を振り返りながらサーキットに向かう。



三時間耐久でまず一番手はチェック中村改め、アイルトン・モテです。
まずは俺が一位になって二位以下をぶっちぎりで突き放しておこう、
そしたらピンク太郎が多少抜かれても痛みは和らぐぜよ!
なんて相方思いのスピードスターだ。
早いだけでなく優しさもある。
本当にモテる男は朝までの敵だと思っていた男にすら思いやる広い心の持ち主って事さ!



じゃあ、いっちょぶち抜いてくるよ!



スタートポジションに全員集合すると、
インストラクターの説明がある。

「赤いランプが消えたらスタートですよ〜」



周りのレーサーの興奮は最高潮だ。
アクセルを吹かす音がサーキット内に轟く。
俺は思った。
うるさいから落ち着いてくれ。



プ…プ…



プォーン!!

レースゲームで聞きなれたスタートの合図音とともに各車一斉にフルスロットルで発進!
場内に爆音が轟く。

ブオーンブオーーン!

それにしてもすさまじい音だ。
20台ものカートが一緒に動くと小さいエンジンとはいえこんなにも音がするものなのか?
…いや、それにしても異常なまでの爆音だ。
ひと際うるさい左の方面に目をやると、近くの道路を暴走族が数十台通り過ぎて行った。
完全にそいつらの音だった。
暴走族のキラキラしたバイクに目を奪われていると思いっきりスタートで超出遅れる。



しかしそれが功をそうした。
我先にと急ぐ集団は第一カーブでクルクルスピン。
後ろから余裕を見ながらそいつらの間をすり抜ける。
その先のコーナーでも皆さんクルクルクルクル。
あとはそれをゆっくりかわしながら進めばいいだけ。

ありがとう! さっきの暴走族!

しかし速さで抜いたわけではないアイルトン・モテ。
あれよあれよとあっという間に抜かれまくり、
抜かれてムキになり追いかけてスピンすること2回…。

結局また最下位に逆戻り。

いやぁ、レースって本当に難しいっすね!



そうこうしているとあっという間にピンク太郎に運転を代わる番。
頑張れ! 運転大好きピンク太郎改めミハエル・モテマッハ!



「小雨のせいで、みんな慎重な運転になってるね」

ピンク太郎! そこだよ!



皆がビビってるときこそ俺たちの真骨頂じゃないか。

攻めのドライビングで抜きまくっておやり!!



運転中に聞こえているワケが無いが、ピンク太郎は親指をおっ立てて猛烈アピール!
なんかわかんねえけど頼もしいぜ!
それにしても釣り師でヘルメットって何に重きを置いているのかさっぱりわからない。



小雨も多少強まる中、男たちの戦いは続く。
その中にはクラッシュしてリタイアする者や、悪質な運転で退場を宣告される者、
満足ゆく結果が出せなかったのか涙を流して悔しがる者もいた。

俺らだって同じように本気。
負けたくない…つまりモテたい気持ちは誰にも負けないぜ!
この3時間でこのサーキットで一番モテる奴等が決まると思うとゾクゾクする!
そのあとも規定周回数で運転を交代しながら、俺達は最速のチームとなるべくレースを続けた。



次第に強まる雨の中、残り僅かとなった時間に俺達は全力を注いだ。
さっきより確実に強くなってきた雨は俺達の体温と体力を容赦なく奪っていく。
視界も悪いし、グリップも効かない。
条件はどんどん悪くなる。

しかしこういうときこそ本当の男の価値ってものが決まるものだぜ!

悪条件の中がむしゃらに走ることしばらく、場内に放送が流れる。

「3時間が過ぎたので、現在走行中の車両はピットインしてください!」

俺達は天才レーサーだが、結果を表す電光掲示板の見方が良くわからなかったので、
表彰台に行って直接順位発表されるのを待った。

「俺たちを呼びな! ナンバー1ってな!」





来い!




【冒頭編】を見る
【結果編】を見る


<<過去ログへ          Indexへ>>